生産者や工場の現場が、どんなに苦労して新鮮なトマトを出荷、製造しているか知っている私は、その本を読んだとき、顔がカーッと赤くなるほど腹が立ったものである。 トマト以外、なにも人っていないフレッシュパックさて、工場に運びこまれたトマトは、まず5段階の洗浄工程を通る。
トマトについたゴミや汚れ、さらには表面に付着した場合の農薬をきれいに洗い流すためだが、一般の家庭で生食用のトマトを洗うのにくらべて10倍ぐらいの洗浄力である。 洗浄が終わると、トマトについた水滴を風で吹きとばす。
なぜ、そんなことをするかといえば、原料がトマトだけということを徹底するためである。 笑い話のようだが、かつて「トマトジュースの原料はトマトだけ」と宣伝したところ、工場を見学した人から、「それはちがう。
だって洗浄工程の水が付着しているではないか」と批判されたからだ。 バカバカしいとは思うが、たしかにトマト以外の要素が入っていたことはまちがいないので、それ以後、水滴を吹きとばすようになった。
洗浄して水滴をとばしたら、いよいよトマトをつぶす。 ここでだいじなのは、つぶされたトマ卜は、ある一定の温度管理のもとで一定時間、タンクの中で寝かされるということだ。
つぶしてから放置することで、トマトに含まれる酵素を働かせ、香りやうま味を引き立たせるためだ。 トマトをつぶしてからどのくらいの温度でどのくらいの時間放置するか、殺菌時の熱のかけ方を何度で何秒にするかといったファクターによって、トマトジュースの味も香りもまったくちがってくる。
この間の温度は、もっとも重要な企業秘密の1つだ。 たとえばここで摂氏50度でおくか、30度でおくかで、できあがるトマトジュースの香りは大きく変わってくる。
同じ品種のトマト、同じブレンドでも、まったくちがう。 たとえそうとうおいしい品種でも、この温度設定が高すぎると、どろりとして、あまり香りがないジュースになってしまう。

逆に低すぎると、味も香りも出てこない。 一定時間放置されたトマトは、一気に短時間で高温処理される。
殺菌するためだが、この加熱方法にも微妙なちがいがある。 世界標準は121度、42秒間とされ、多くのメーカーはこの基準からいかに温度を下げ、加熱時間を短くするかを競っている。
それは、できるだけトマトの色をそのままあざやかに保ち、フレーバーを壊したくないからだ。 消費者からすれば、30度から1、2度下げることや、42秒から1、2秒短くすることで、結果がどうちがうんだと思われるかもしれない。

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